Amazon広告の運用を代行に任せると決めたあと、最初の作業になるのが権限の受け渡しです。ここで「とりあえずログインのIDとパスワードを送ってください」と言われ、そのまま送ってしまう出品者は少なくありません。手間がかからないように見えますが、これは後から一番面倒なことになる渡し方です。

この記事では、Amazon広告 代行 権限の渡し方を、任せる範囲ごとに整理します。結論は3つです。ログイン情報は共有せず、ユーザーとして招待して個別に権限を渡すこと。渡すのは任せる作業に要る範囲だけにすること。契約前に権限の一覧を文書にして、終了時の外し方まで決めておくこと。 以下では、なぜそうするのか、具体的にどの権限を渡して、どれを渡さないのかを順に説明します。

代行会社そのものの選び方はAmazon広告の運用代行の比較の点、契約書で見る項目は運用代行の契約で確認することにまとめています。この記事は、契約が決まったあとの「渡し方」に絞ります。

Amazon広告の代行に権限を渡す2つの方法

代行に作業してもらう方法は、大きく分けて2つあります。

渡し方どうするか良い点困る点
ログイン情報の共有自社のIDとパスワードを代行に送る設定がすぐ終わる誰が何をしたか追えない。全機能に触れる。止めるにはパスワード変更しかない
ユーザー招待代行の担当者を別ユーザーとして招待し、機能ごとに権限を付ける範囲を絞れる。操作した人が分かる。外すときはそのユーザーを削除するだけ最初の設定に少し手間がかかる

ログイン情報の共有を避けるべき理由は、手間の問題だけではありません。

まず、全部の機能に触れてしまいます。広告だけを任せたつもりでも、主アカウントでログインすれば、価格、在庫、入金先の口座、ユーザーの管理まで操作できる状態になります。代行側に悪意がなくても、操作の誤りで広告以外のところを変えてしまう余地が残ります。

次に、誰がやったのかが分かりません。売上が急に落ちて履歴をたどったとき、操作がすべて同じアカウント名で記録されていると、自社の誰かがやったのか、代行がやったのかの区別がつきません。トラブルの原因を探す時間が長引きます。

さらに、二段階認証のコードが自社の担当者の携帯に届く設定なら、代行がログインするたびにコードを聞かれます。これを避けるために認証を外したり、認証用の端末を代行に預けたりすると、アカウントの守りが一気に弱くなります。アカウントの健全性を保つ考え方はアカウントの健全性の見方を参照してください。

規約の面でも、アカウントを複数の人で使う場合はユーザーを分けて招待する形が想定されています。最新の規約と案内はセラーセントラルで確認してください。

任せる範囲ごとに渡す権限を決める

ユーザー招待で渡す場合も、全部の権限を付けてしまえばログイン情報の共有とあまり変わりません。任せる作業を先に決めて、そこから必要な権限を逆算します。

権限は多くの場合、機能ごとに「権限なし」「閲覧」「閲覧と編集」のように段階で選べます。画面の表記や項目の分け方は変わることがあるので、設定するときはセラーセントラルと広告の管理画面の最新の表示で確認してください。考え方は次のとおりです。

任せる範囲渡す権限の目安渡さない権限
広告の運用だけ広告キャンペーンの閲覧と編集、広告レポートの閲覧価格・在庫の編集、商品ページの編集、支払い・入金、ユーザー管理
広告+売上の分析上に加えて、ビジネスレポートなど売上レポートの閲覧同上
広告+商品ページの改善上に加えて、商品情報の編集(任せる商品の範囲を決めておく)価格・在庫の編集、支払い・入金、ユーザー管理
運用全般(在庫・価格を含む)契約で決めた作業に要る範囲。在庫や価格の編集を渡す場合は、変更の前に自社の承認を取る決まりを付ける支払い・入金、ユーザー管理、アカウント設定

広告の運用だけを任せる場合

一番多い形です。広告の管理画面でキャンペーンを作り、入札を変え、除外キーワードを足すのに要る権限を渡します。結果を見るための広告レポートの閲覧も付けます。

ここで迷いやすいのが、売上のレポートを見せるかどうかです。広告の成果は、広告経由の売上だけを見ても判断できません。広告費を全体の売上で割ったTACOS(TACOSとは)や、自然検索の売上の動きを見るには、全体の売上が要ります。広告だけを任せる場合でも、売上レポートの閲覧は渡しておくほうが、報告の質が上がります。 閲覧だけなら、数字を書き換えられることはありません。

商品ページの改善まで任せる場合

広告の成果は、商品ページの出来に大きく左右されます。メイン画像や商品名を直す提案まで任せるなら、商品情報の編集の権限が要ります。

ただし、商品情報の編集を渡すと、価格以外のページの中身は代行が書き換えられる状態になります。どの商品を、どこまで変えてよいかを文書で決めておきます。 たとえば「商品名と商品仕様は代行が変更してよい。メイン画像の差し替えは、事前に自社の確認を取る」のように、項目ごとに線を引きます。商品ページの作業範囲と費用の考え方は商品ページ制作の費用にまとめています。

運用全般を任せる場合

在庫の発注判断や価格の調整まで任せる場合は、権限の範囲が広がります。この形でも、価格と在庫の変更は事前に自社の承認を取る決まりにしておくのが安全です。価格の変更は粗利に直結し、在庫は資金繰りに直結するからです。代行側からしても、承認の記録が残るほうが、後で責任の所在を問われたときに説明しやすくなります。

渡してはいけない権限

どの範囲を任せる場合でも、代行に渡さないほうがよい権限があります。

  1. 支払い・入金に関する権限:入金先の口座やクレジットカードの情報は、広告の運用には要りません。ここを変えられると、売上の入金先が変わるおそれがあります
  2. ユーザー権限の管理:これを渡すと、代行が別のユーザーを招待したり、自社の担当者の権限を変えたりできてしまいます。誰がアカウントに入れるかは、自社だけが決められる状態にしておきます
  3. アカウントの設定(会社情報・連絡先など):アカウントの持ち主として登録している情報は、自社で管理します。Amazonからの重要な連絡の受け取り先が変わると、通知に気づけなくなります
  4. 広告の支払い方法の設定:広告費を払うカードや請求の設定も、自社で管理します。予算の上限は、支払い方法ではなくキャンペーンやポートフォリオの側でかけます

広告の予算をまとめて管理したい場合は、ポートフォリオで上限をかける方法が使えます(Amazon広告のポートフォリオの使い方)。上限の金額は自社で決めて、代行には中で運用してもらう形にすると、広告費が想定を超えて使われる心配が減ります。

権限の渡し方の手順

実際の流れは次の順番です。

  1. 任せる範囲を決める:前の節の表をもとに、広告だけか、商品ページまでか、運用全般かを決めます
  2. 権限の一覧を文書にする:渡す権限、渡さない権限、承認が要る操作を一覧にし、契約書か覚書に添付します
  3. 代行の担当者のメールアドレスを聞く:会社の共有アドレスではなく、担当者ごとのアドレスで招待するほうが、誰が操作したかを追えます
  4. セラーセントラルからユーザーを招待する:招待を受けた担当者が、自分でアカウントを作って承認します。パスワードは担当者本人が決めるので、自社がパスワードを知る必要はありません
  5. 権限を付ける:一覧のとおりに付けます。付け終えたら、画面を印刷するかスクリーンショットを残しておきます
  6. 広告の管理画面のユーザーも確認する:広告の管理画面側で別にユーザーと役割を設定する場合があります。こちらも同じ範囲に揃えます
  7. 初回の作業後に操作履歴を見る:最初の1〜2週間は、代行が何を変えたかを変更履歴で確認し、文書の範囲を超えた操作がないかを見ます

担当者が交代したときは、前任者のユーザーを外して新しい担当者を招待し直します。共有アドレスで招待していると、この交代が自社から見えません。

権限の範囲を試算で考える

権限の範囲は、「何かあったときにどこまで影響が出るか」で考えると決めやすくなります。広告の権限を渡す場合に、操作の誤りで起きうる損失を試算してみます。

仮に、広告のキャンペーンが30本あり、日予算の合計が3万円だとします。代行の担当者が入札を誤って高く設定し、翌日まで気づかなかった場合、最大で1日3万円が想定より高い単価で使われます。気づくのが1週間後なら、最大21万円です。

気づくまでの日数(仮定)日予算の合計3万円のときの最大の使用額
1日30,000円
3日90,000円
7日210,000円
30日900,000円

これは日予算を使い切った場合の上限で、実際には入札の誤りがあっても全額が無駄になるわけではありません。ただ、気づくまでの日数が損失の大きさを決めることは分かります。権限を渡す側が決めておくべきなのは、次の2つです。

  • ポートフォリオで月の上限をかける:上の例で、月の上限を70万円にしておけば、誤りがあってもそれ以上は使われません
  • 確認の頻度を決める:週1回、広告費の合計を自社でも見ると決めておけば、気づくまでの日数は最大で7日に収まります

同じ考え方で、価格の編集権限を渡した場合も試算できます。仮に、売価3,000円の商品の価格が誤って2,000円に変わり、1日20個売れる商品だとすると、1日あたり2万円の売上が失われます。粗利が薄い商品なら、それだけで赤字になる日が出ます。価格や在庫の権限を承認制にしておく理由はここにあります。自社商品の粗利と損益分岐は利益シミュレーターで確認できます。

契約終了時の権限の外し方

権限の話は、契約の始まりより終わりのほうが大事です。終わるときに外し忘れると、契約が終わった会社が自社のアカウントに入れる状態が続きます。

契約を終える前に、次を決めておきます。

項目決めておくこと
権限を外す日契約終了日の当日か、引き継ぎの作業が終わった日か
外す人自社の誰が、どの画面で外すか
引き継ぐものキャンペーンの設定、除外キーワードの一覧、入札の履歴、月次レポート
確認すること外した後に、代行のユーザーが一覧に残っていないか

ユーザー招待で渡していれば、外すのはそのユーザーを削除するだけです。ログイン情報を共有していた場合は、パスワードの変更、二段階認証の設定の見直し、登録してある連絡先の確認まで要ります。引き継ぎで受け取るものの一覧は運用代行を解約するときの引き継ぎにまとめています。

引き継ぎの材料が自社に残るかどうかは、権限の渡し方とも関係します。広告のキャンペーンは自社のアカウントの中で作られているので、ユーザーを外してもキャンペーンは残ります。一方で、代行が自社の外で作った管理表や分析の資料は、渡してもらわないと残りません。契約の時点で、終了時に何を渡してもらうかを書いておきます。

よくある質問

代行からログイン情報を送るよう求められました。断ってもいいですか。 断ってかまいません。ユーザーとして招待する形で作業できるかを聞いてください。広告の運用だけなら、招待で渡せる権限で作業は回ります。招待では作業できないという理由が具体的に示されない場合は、その会社の進め方そのものを確認したほうがよい場面です。

閲覧だけの権限で、代行は何ができますか。 数字を見て分析し、改善の提案を出すところまでできます。実際の変更は自社で行う形になるので、設計と月1回の判断だけを外に出し、日々の運用は社内で回す場合に向いています。この分け方をする場合の費用の考え方はAmazon広告の運用代行の費用を参照してください。

権限を絞りすぎて作業が止まることはありませんか。 あります。広告の運用を任せたのに売上レポートを見せなければ、広告が全体の売上にどう効いているかを代行が判断できません。最初は一覧どおりに渡し、作業の中で足りない権限が出てきたら、理由を聞いたうえで追加する形が現実的です。追加した権限も文書の一覧に書き足しておきます。

まとめ

  • ログイン情報の共有は避け、代行の担当者をユーザーとして招待して権限を個別に渡す
  • 任せる作業を先に決め、そこから必要な権限を逆算する。広告だけでも売上レポートの閲覧は渡すと報告の質が上がる
  • 支払い・入金、ユーザー権限の管理、アカウントの設定、広告の支払い方法は渡さない
  • 価格と在庫の編集を渡す場合は、変更の前に自社の承認を取る決まりにする
  • ポートフォリオで月の上限をかけ、週1回は自社でも広告費を確認して、誤りに気づくまでの日数を短くする
  • 契約前に権限の一覧を文書にし、終了時に外す日・外す人・引き継ぐものまで決める

当社は2019年からAmazonの支援をしていて、30ブランド・300商品ほどを見てきました。作業に入る前に、渡していただく権限の一覧を一緒に作るところから始めています。任せる範囲と料金はAmazon広告の運用代行の内容と料金プランに公開しています。どこまで任せるかが決まっていない場合は、無料の運用診断で弱いところを整理してから、お問い合わせでご相談ください。