FBA倉庫に売れ残りが溜まってくると、セラーセントラルに「返送/所有権の放棄」の依頼画面が出てきます。どちらも費用がかかる手続きで、選び方を間違えると、在庫を減らしたつもりで手元のお金も減らします。

迷う原因は、比べる物差しが揃っていないことです。保管料は毎月少しずつ、返送の手数料と送料は一度に、放棄の手数料は返送より軽いけれど商品が戻らない。費用の出方が違うので、そのままでは並べられません。

この記事では、FBA 返送と所有権放棄、それに「置き続ける」「値下げして売り切る」を加えた4つを、最後に手元に残る金額に直して比べる手順を書きます。数字はすべて仮のものです。手数料と保管料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数に置き換えて読んでください。保管料の仕組みそのものはFBAの保管料と長期在庫の考え方にまとめています。

FBA 返送と所有権放棄、4つの出口の違い

長期在庫の処分には、大きく4つの出口があります。

出口何が起きるかお金の出方商品の行き先
置き続けるそのまま販売を続ける保管料が毎月かかる。期間が長いと追加の保管料が乗ることがあるFBA倉庫
値下げして売り切る価格・クーポンで回転を上げる1個あたりの粗利が減る。保管料は売れた分だけ止まるお客様
返送自社の倉庫・事務所に送り戻す1個ごとの返送手数料+自社側の保管・再出荷の手間自社
所有権の放棄Amazonに処分を任せる1個ごとの放棄手数料。仕入原価は回収できない戻らない

見落としやすいのは、返送は「処分」ではなく「場所を移すだけ」だという点です。戻した在庫を他の販路で売るか、FBAに入れ直す予定がなければ、返送費用と自社の保管の手間を払ったうえで、結局どこかで処分することになります。

一方、所有権の放棄は手数料が返送より軽いことが多い代わりに、仕入原価がそのまま損になります。どちらが得かは、商品の原価と、戻したあとに売れる見込みで決まります。

判断の前に揃える数字

比べる前に、対象のSKUごとに次の5つを揃えます。

  1. 在庫数:FBA倉庫にある販売可能な数
  2. 直近90日の販売数:在庫が何か月で捌けるかを見るため
  3. 1個あたりの月の保管料:サイズと時期で変わる。セラーセントラルの在庫レポートで実数を見る
  4. 1個あたりの返送手数料と放棄手数料:同じく最新の案内で確認する
  5. 値下げしたときの1個あたり粗利:販売手数料・FBA配送料を引いた後の金額

在庫月数は「在庫数 ÷ 直近の月平均販売数」で出します。仮に在庫300個、直近90日で45個売れているなら、月15個で20か月分です。在庫月数が12か月を超えるSKUから順に、この記事の比較をかけていきます。月数の目安や発注量の決め方は在庫管理の基本と発注量の計算ツールで確認できます。

手元に残る金額で比べる手順

4つの出口を、同じ12か月の間に「いくら入って、いくら出るか」で並べます。次の仮の条件で計算します。

  • 在庫300個、月15個売れている(在庫20か月分)
  • 1個あたりの月の保管料:30円と仮定
  • 返送手数料:1個80円、放棄手数料:1個40円と仮定
  • 定価で売れたときの1個あたり粗利:600円、仮に3割値下げすると粗利は150円で、月60個売れると仮定
  • 返送後に他の販路で売れるのは半分(150個)、その販路での1個あたり粗利は400円と仮定(送料・手間込み)
出口(12か月)入るお金出るお金差し引き
置き続ける180個×600円=108,000円保管料 75,600円(平均残数210個×30円×12か月)32,400円・120個残る
値下げして売り切る300個×150円=45,000円保管料 22,500円(平均残数150個×30円×5か月で売り切り)22,500円・残りなし
返送して他販路で売る150個×400円=60,000円返送手数料 24,000円(300個×80円)36,000円・150個は自社に残る
所有権の放棄0円放棄手数料 12,000円(300個×40円)マイナス12,000円・残りなし

この仮定では、置き続けると12か月後にまだ120個残り、その間の保管料で粗利の7割が消えます。返送がいちばん多く残るように見えますが、売れ残った150個の保管と処分の手間は表に入っていません。値下げは金額では劣っても、5か月で在庫がゼロになり、6か月目以降の保管料が止まります。

数字そのものより、この表を自社のSKUで埋めることが判断の中身です。 粗利が大きい商品なら置き続けるほうが残ることもありますし、原価の安い小物なら放棄が一番損の少ない出口になることもあります。粗利の計算は利益計算ツールに販売価格と手数料を入れると、値下げ後の1個あたり粗利がすぐ出ます。

返送を選ぶ条件、放棄を選ぶ条件

表を埋めると、だいたい次のどれかに当てはまります。

返送が向くとき

  • 他の販路(自社EC・楽天・卸・実店舗)で売る当てがある
  • 季節商品で、来シーズンにFBAへ入れ直す予定がある
  • 仕入原価が高く、放棄すると損が大きい
  • 検品し直せば良品として戻せる(パッケージの傷み程度)

季節商品を戻して入れ直す場合は、戻すときの手数料と、入れ直すときの納品の費用が二重にかかります。来季に何個売れる見込みかを先に出し、その数だけ戻して残りは別の出口に回すのが現実的です。季節の山に合わせた在庫の組み方は季節商品の在庫計画にまとめています。

所有権の放棄が向くとき

  • 原価が安く、返送手数料が1個の粗利を上回る
  • 型落ち・パッケージ変更で、戻しても売り先がない
  • 自社に保管場所がない、または保管・再出荷の手間をかけられない
  • 不良・破損で販売不可になっている在庫

値下げが向くとき

  • 定価では動かないが、値下げすれば月の販売数が数倍に上がる見込みがある
  • 値下げしても1個あたり粗利がプラスに残る
  • 同じASINを今後も売り続ける予定がない(値下げ価格の印象が残っても困らない)

続けて売るASINで大きく値下げすると、その後の価格の戻し方が難しくなります。値下げで処分するか迷う場合は、赤字商品の見分け方で、そもそもこのSKUを続けるかから判断してください。

よくある失敗

返送してから行き先を考える。 戻した段ボールが事務所に積まれたまま半年、というのはよくある話です。返送依頼を出す前に、戻した後の売り先と期限を決めます。

放棄を「もったいない」で先延ばしにする。 原価は過去に払ったお金で、どの出口を選んでも戻りません。比べるのは「これから出ていくお金」だけです。先延ばしにした月の分だけ保管料が積み上がります。

SKUをまとめて一律に処分する。 同じ商品でもカラー・サイズで回転は違います。売れているSKUまで巻き込んで放棄すると、欠品を自分で作ることになります。1SKUずつ在庫月数を出してから決めます。

発注の見直しをしない。 処分した原因が発注量の読み違いなら、次の発注で同じことが起きます。処分と同時に、そのSKUの発注点と発注量を見直してください。

よくある質問

返送と所有権の放棄は、どちらが手数料が安いですか。 一般には放棄のほうが1個あたりの手数料が軽いことが多いですが、サイズ・重さ・時期で変わります。セラーセントラルの最新の案内で、対象SKUのサイズ区分の金額を確認してください。手数料の差より、仕入原価を回収できるかどうかのほうが判断への影響は大きくなります。

放棄した在庫はどうなりますか。 Amazon側で処分されるか、寄付などに回されます。商品は戻らず、売上にもなりません。後から取り戻すことはできないので、放棄する前に他の販路で売れないかを一度だけ確認しておくと安心です。

長期在庫になる前に防ぐ方法はありますか。 在庫月数を毎月見て、6か月を超えたSKUから値下げやクーポンで回転を上げるのが基本です。新商品の初回発注は、売れ方が見えるまで少なめにします。毎月の点検の手順は月1回の運用ルーティンに載せています。

まとめ

  • 長期在庫の出口は「置き続ける・値下げ・返送・所有権の放棄」の4つ
  • 返送は処分ではなく場所を移すだけ。戻した後の売り先と期限を先に決める
  • 4つを同じ期間の「入るお金−出るお金」に直して比べる。原価は比較に入れない
  • 原価が高く売り先がある→返送、原価が安く売り先がない→放棄、値下げで粗利が残る→値下げ
  • 手数料と保管料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認する
  • 処分と同時に発注量を見直し、同じ在庫をもう一度作らない

在庫月数の出し方から処分の判断まで、SKUごとに整理したい場合は無料の運用診断をご利用ください。在庫と発注の運用ごと任せたい場合はAmazon運用代行のページに支援の範囲を書いています。