Amazonの運用代行を検討していて、見積もりは手元にある。月額10万円。これを払って、本当に利益は残るのか。この問いに数字で答えられないまま契約すると、半年後に「売上は伸びたけれど、手元のお金は増えていない」という状態になりがちです。
Amazon 運用代行 費用対効果は、契約の前に計算できます。考え方は単純で、代行費用を払っても利益が減らないために、売上がいくら増えればよいか(損益分岐の売上の増分)を先に出し、それが現実的かどうかを判断します。
この記事では、その計算の手順と、料金の型による違い、売上の増分以外に効果として数えてよいもの、契約前に確認する点をまとめます。数字はすべて仮の条件を置いた計算例です。自社の実数に置き換えて読んでください。料金の型そのものの違いは運用代行の費用の選び方にまとめています。
費用対効果は「売上」ではなく「利益の増分」で測る
最初に押さえたいのは、代行の効果を売上の伸びで測らないことです。
代行を入れて月の売上が300万円から360万円に伸びたとします。60万円の増加は大きく見えますが、代行費用が月10万円で、増えた売上の粗利率が15%なら、増えた粗利は9万円です。代行費用10万円を差し引くと、手元の利益はむしろ1万円減っています。
費用対効果は次の式で考えます。
- 代行による利益の増分 = 増えた売上 × 粗利率(広告費・手数料を差し引いた後) + 削減できた費用 − 代行費用
この値がプラスなら、代行は費用に見合っています。ここで使う粗利率は、販売価格から原価・Amazonの手数料・FBA配送料・広告費を差し引いた後の率です。手数料率やFBA料金はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してください。自社の粗利率がまだ分からない場合は、利益シミュレーターに売価・原価・手数料を入れると出せます。
損益分岐の売上の増分を出す
代行費用を回収するのに必要な売上の増分は、次の式で出ます。
- 損益分岐の売上の増分 = 月の代行費用 ÷ 粗利率
仮に月の代行費用が10万円、粗利率が20%なら、10万円÷20%で月50万円です。代行を入れて月の売上が50万円以上増えなければ、利益は減ります。
月の代行費用と粗利率の組み合わせで並べると、次のようになります。
| 月の代行費用(仮定) | 粗利率15% | 粗利率20% | 粗利率30% |
|---|---|---|---|
| 5万円 | 約33万円 | 25万円 | 約17万円 |
| 10万円 | 約67万円 | 50万円 | 約33万円 |
| 15万円 | 100万円 | 75万円 | 50万円 |
表の数字は、毎月これだけ売上が増えないと代行費用を回収できない、という線です。
現在の売上と比べて現実的か判断する
次に、この増分が現在の売上に対して何%の伸びにあたるかを出します。
仮に現在の月の売上が300万円で、損益分岐の増分が50万円なら、必要な伸びは約17%です。一方、現在の売上が100万円なら、同じ50万円は50%の伸びにあたります。
| 現在の月の売上(仮定) | 増分50万円の伸び率 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 100万円 | 50% | 商品ページや広告に大きな改善余地がある場合に限られる |
| 300万円 | 約17% | 改善余地が具体的に見えていれば狙える範囲 |
| 1,000万円 | 5% | 運用の細かい改善で届きやすい |
売上が小さい段階ほど、同じ代行費用でも回収のハードルは高くなります。売上が小さいうちに月額の大きい代行を入れると、伸びても費用に追いつかないことがあります。その段階では、設計だけを単発で依頼して運用は自社で回す、という選択肢も比べてください。
効果が出るまでの期間を入れる
もう1つ見落とされやすいのが、効果が出るまでの期間です。代行を入れた初月から売上が伸びることはまれで、広告の設定を変えてから数字が動くまで数週間、商品ページの改善なら反映と検証にさらに時間がかかります。
仮に、最初の2か月は売上の増分がほぼ0で、3か月目から月60万円ずつ増えるとします。代行費用は月10万円、粗利率は20%です。
| 月 | 売上の増分 | 粗利の増分 | 代行費用 | その月の差引 | 累計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1か月目 | 0円 | 0円 | 10万円 | −10万円 | −10万円 |
| 2か月目 | 0円 | 0円 | 10万円 | −10万円 | −20万円 |
| 3か月目 | 60万円 | 12万円 | 10万円 | +2万円 | −18万円 |
| 6か月目 | 60万円 | 12万円 | 10万円 | +2万円 | −12万円 |
| 12か月目 | 60万円 | 12万円 | 10万円 | +2万円 | 0円 |
この仮定では、月ごとの収支は3か月目から黒字になりますが、最初の2か月の持ち出しを取り戻すのは12か月目です。月の損益分岐を超えても、累計で回収するまでには時間がかかるので、最低契約期間と見比べて判断します。効果が出るまでの期間の考え方は運用代行の成果が出るまでの期間にまとめています。
料金の型で損益分岐はどう変わるか
代行の料金には、月額固定、広告費連動、売上連動などの型があります。型によって、損益分岐の考え方が変わります。
月額固定
上で計算した形です。代行費用が一定なので、売上が伸びるほど費用対効果は良くなります。損益分岐を一度超えれば、その先の伸びはすべて利益の増分になります。
売上連動
売上の何%かを払う型は、売上が伸びると代行費用も増えます。仮に、全体の売上の5%を払う契約で、粗利率が20%、現在の月の売上が300万円だとします。
代行を入れる前の粗利は300万円×20%で60万円です。売上が増分Xだけ伸びたとき、粗利は(300万円+X)×20%、代行費用は(300万円+X)×5%です。手元の利益が60万円を下回らないためには、
- (300万円+X)×(20%−5%)≧ 60万円
を満たす必要があり、Xは100万円以上になります。現在の売上の約33%の伸びです。
売上連動の型は、もともとあった売上にも料率がかかるため、損益分岐が高くなりやすいのが特徴です。料率が「全体の売上」にかかるのか「代行開始後に増えた分」にかかるのかで、結果は大きく変わります。契約前に、料率の対象を文章で確認してください。成果報酬型の注意点は運用代行の成果報酬の仕組みに書いています。
広告費連動
広告費の何%かを払う型は、広告費を増やすと代行費用も増えます。広告費を増やして売上を伸ばす提案が出たときは、増えた広告費と、それに連動して増える代行費用の両方を差し引いて、利益が残るかを計算します。
| 料金の型 | 損益分岐の特徴 | 契約前に確認すること |
|---|---|---|
| 月額固定 | 一度超えれば、伸びた分はすべて利益になる | 最低契約期間と、月額に含まれる作業の範囲 |
| 売上連動 | 既存の売上にも料率がかかると、損益分岐が高くなる | 料率の対象が全体か増分か |
| 広告費連動 | 広告費を増やすほど代行費用も増える | 広告費を増やす提案の利益の試算 |
売上の増分以外に数えてよい効果
費用対効果は、売上の伸びだけで決まるわけではありません。次の2つも、数字にして加えてかまいません。
広告費の削減
代行の効果が、売上を増やすことではなく、無駄な広告費を減らすことに出る場合があります。
仮に、月の広告費が50万円、ACOSが30%だとします。広告経由の売上は約167万円です。代行が除外キーワードの整理や入札の見直しで、同じ売上のままACOSを25%に下げられれば、広告費は約42万円になり、月に約8万円が浮きます。
この8万円は、売上が増えていなくても利益の増分です。月の代行費用が10万円なら、残りの2万円分だけを売上の増分で回収すればよいことになります。広告費が膨らんでいる原因の見分け方はACOSが高いときの対処にまとめています。
社内の時間
自社で運用している場合、その作業に使っている時間にも費用がかかっています。
仮に、担当者が月40時間を運用に使っていて、その時間の価値を1時間3,000円とすると、月12万円です。代行に任せてその時間をほかの仕事に回せるなら、その価値も効果に数えられます。
ただし、時間の価値を数えてよいのは、浮いた時間を実際に別の仕事に使える場合だけです。担当者の仕事が減っても、その時間がほかの売上につながらなければ、利益は増えません。代行に任せたあとも、月次の報告を確認する時間(目安として月数時間)は自社に残ります。
自社で回すか代行に任せるかの判断軸は自社で運用するか外注するかに書いています。
契約の前に確認する5つの点
費用対効果の計算をしたら、それを前提に見積もりの中身を確認します。
- 何の数字が改善すると見込んでいるか:売上の増分なのか、ACOSの改善なのか、作業時間の削減なのか。提案の根拠になる数字を聞く
- 効果が出るまでの期間の見立て:何か月目から数字が動くと考えているか。最低契約期間と照らし合わせる
- 成果の測り方:売上の伸びを、季節やセールの影響と分けてどう測るか。比較の基準になる期間を決めておく
- 料率の対象:連動型なら、料率がかかるのが全体か増分か
- 途中で見直す日:3か月目などに、費用対効果を確かめて継続を判断する日を決めておく
とくに3つ目は大事です。代行を入れた月がたまたまセールの時期だと、売上の伸びの大半はセールのおかげかもしれません。前年の同じ月と比べる、代行の対象外の商品と比べるなど、比較の方法を契約前に決めておくと、半年後の判断がぶれません。目標の決め方は運用代行の目標の決め方が参考になります。
当社は2019年からAmazonの支援をしていて、これまでに30ブランド・300商品ほどを見てきました。相談の段階でも、まず粗利率と損益分岐の確認から始めます。作業の範囲はAmazon運用代行、料金は料金プランに公開しているので、上の計算に当てはめて比べてみてください。
よくある質問
粗利率が10%程度しかありません。代行を入れても回収できますか。 粗利率が低いほど、損益分岐の売上の増分は大きくなります。月の代行費用が10万円なら、粗利率10%では毎月100万円の売上の増分が必要です。この場合は、売上を伸ばす前に、原価や価格、広告費の見直しで粗利率そのものを上げられないかを先に検討してください。粗利率の目安は利益率の目安にまとめています。
代行を入れてから売上が伸びましたが、代行のおかげか分かりません。 比べる基準を決めていないと、判断は難しくなります。前年の同じ月との比較、代行の対象外の商品との比較、広告経由の売上と自然流入の売上の分解の3つを並べると、代行の効果をある程度切り分けられます。契約前に、どの比較で効果を判断するかを決めておくのが理想です。
費用対効果が合わないと分かったら、すぐ解約できますか。 最低契約期間がある場合は、その期間が終わるまで解約できないのが一般的です。だからこそ、契約前に損益分岐と効果が出るまでの期間を計算し、最低契約期間の中で回収の見込みが立つかを確かめておきます。途中で見直す日を契約に入れてもらえるかも、相談の段階で聞いてください。
売上連動と月額固定、どちらが費用対効果は良いですか。 現在の売上が大きく、伸びの余地が小さいなら月額固定のほうが損益分岐は低くなりやすいです。売上がまだ小さく、代行費用の固定額が重い段階では、増分にだけ料率がかかる連動型が合うこともあります。どちらが良いかは、自社の売上と粗利率を当てはめて、両方の損益分岐を出して比べてから決めてください。
まとめ
- 代行の費用対効果は、売上の伸びではなく利益の増分で測る
- 損益分岐の売上の増分は「月の代行費用÷粗利率」で出せる
- その増分を現在の売上と比べて、何%の伸びが必要か確かめる
- 効果が出るまでの期間を入れると、累計での回収にはさらに時間がかかる
- 売上連動の型は、既存の売上にも料率がかかると損益分岐が高くなる
- 広告費の削減と、実際に別の仕事に使える社内の時間も効果に数えてよい
- 契約前に、成果の測り方と途中で見直す日を決めておく
自社の数字で損益分岐を出してみたい場合は、利益シミュレーターで粗利率を確かめたうえで、Amazon運用の無料診断かお問い合わせからご相談ください。
