楽天市場で売上が立っている店舗が、次の販路としてAmazonを考えるのは自然な流れです。商品も在庫も撮影素材もある。お客様対応の経験もある。それなら同じ担当者でAmazonも回せるのではないか、と考えるところから相談が始まることがよくあります。

ところが実際に始めると、楽天で身につけたやり方の半分ほどは、Amazonではそのまま通じません。商品ページの作り方、検索の仕組み、広告、在庫の預け方。通じない部分を手探りで覚えているうちに、楽天側の運用が手薄になり、両方の売上が落ちる、という形の失敗が起こりがちです。

この記事では、楽天 Amazon 出店 外注を考えるときに、どの作業を自社に残し、どの作業を外に頼むかの分け方を書きます。一社にまとめるかモール別に分けるかは楽天とAmazonの運用代行はまとめるか分けるか、両モールの違いそのものは楽天とAmazonの違いに分けて書いているので、あわせて読んでください。

楽天の経験がそのまま使える作業、使えない作業

最初に、楽天での経験が生きる作業と、Amazonで覚え直しになる作業を分けます。外に頼む範囲は、主に「覚え直しになる作業」から選ぶことになります。

作業楽天の経験理由
仕入れ・原価の管理そのまま使える商品と仕入れ先は同じ。原価の把握はモールに関係ない
撮影素材一部使える素材は流用できるが、メイン画像は白背景など決まりが違う
お客様対応一部使える問い合わせの質は近いが、返品や評価の仕組みが違う
商品ページの作成覚え直し縦に長いページではなく、決まった枠に情報を入れる形
検索対策覚え直し商品名・箇条書き・検索キーワード欄の使い方が違う
広告運用覚え直し広告の種類と、入札・除外の考え方が違う
在庫と出荷覚え直しFBAに預けるか自社で出すかを選ぶ。納品の手順が独特
価格の決め方覚え直し同じ商品を複数の出品者が売る形があり、カートの取り合いがある

仕入れ・原価・素材・お客様対応という「商品と店の土台」は楽天の経験がそのまま生き、ページ・検索・広告・在庫という「Amazonの仕組みに沿った運用」は覚え直しになる、というのが大まかな分かれ方です。

楽天のやり方を持ち込んで起きやすい失敗

相談でよく見る失敗を挙げておきます。どれも楽天では正しかったやり方です。

  • 楽天の商品画像をそのままメイン画像に使う。 文字や背景の入った画像は、Amazonのメイン画像の決まりに合わないことがあり、検索結果に出にくくなります
  • 楽天の長い商品説明を貼り付ける。 Amazonの商品説明は表示される位置も文字数の扱いも違い、読まれる場所は商品名と箇条書きが中心です
  • セールの値引きで売る前提の価格を付ける。 楽天の大型セールに合わせた価格設計は、Amazonのセールの仕組みと周期に合いません
  • 楽天と在庫を共有したまま出品する。 片方で売れたのに在庫表示が残り、欠品や出荷遅れで評価を落とします
  • ブランド登録をせずに出品する。 同じ商品に他の出品者が乗り、商品情報を自社で決められなくなることがあります

ブランド登録の意味はブランド登録のメリットに、出品前に揃えるものは出品準備のチェックリストにまとめています。

自社でやる範囲と、外に頼む範囲を分ける基準

作業ごとに、次の3つの問いで自社か外かを決めます。

  1. その作業に、商品や店の判断が要るか。 要るなら自社に残す。価格の上げ下げ、在庫の発注、どの商品に力を入れるかは、外に任せると判断が遅れます
  2. その作業は、Amazon特有の知識が要るか。 要るなら外に頼む候補。商品ページの枠の使い方、広告の構造、FBAの納品は、覚えるまでに時間がかかります
  3. その作業は、毎週回り続けるか、一度で終わるか。 一度で終わる作業は単発で頼み、毎週回る作業は、いずれ自社に移すか継続で頼むかを決めます

この基準を当てはめると、次のような分け方になることが多いです。

作業おすすめの分け方理由
価格・発注・商品の選定自社商品と店の判断が要る
お客様対応自社楽天の体制をそのまま使える
撮影素材の用意自社(素材を渡す)楽天用の素材をまとめて渡せば足りることが多い
商品ページの初期作成外(単発)Amazon特有の知識が要り、一度で大枠が終わる
出品・ブランド登録・FBA設定外(単発)手順が多く、最初の一回に時間がかかる
広告運用外(継続)→ 自社へ移す毎週回るうえ、立ち上げ期は判断が多い
数字の点検外と自社で一緒に月1回の定例で、両者が同じ数字を見る

広告運用を自社でやるか頼むかは、自分で運用するか代行に頼むかで判断の材料を整理しています。

楽天側の担当者を兼務させない

分け方を決めるときに見落とされやすいのが、楽天側の担当者の時間です。Amazonの立ち上げ期は、出品・FBA納品・広告の初期設定が重なり、思った以上に時間を取られます。楽天の担当者に兼務させると、楽天側の更新やセール準備が遅れ、売上の柱が揺らぎます。

兼務させる場合でも、立ち上げの最初の3か月は外に任せる範囲を広めに取り、担当者には「判断と確認」だけを残す形にしておくと、楽天側への影響を抑えられます。

時期によって、頼む範囲を変える

頼む範囲は、一度決めたら固定ではありません。立ち上げ期・育成期・安定期で、自社に移せる作業が増えていきます。

時期外に頼む範囲自社に残す範囲移す準備
立ち上げ(0〜3か月)商品ページ、出品、FBA設定、広告の初期設計と運用価格、発注、お客様対応、素材外注先の作業を記録してもらう
育成(3〜6か月)広告運用、商品ページの改善上に加えて、FBA納品広告の週次の数字を自社でも見る
安定(6か月以降)広告の設計の見直し、点検上に加えて、広告の日々の調整判断の基準を文書にしておく

最初から「全部を外に任せて、そのまま続ける」と決めると、自社に知識が残りません。逆に「全部を自社で覚える」と決めると、楽天側が手薄になります。立ち上げは広く頼み、育成期から少しずつ自社に移すのが、楽天で土台がある店舗には合いやすい進め方です。最初に何を1商品目にするかは最初の1商品の選び方が参考になります。

3つの頼み方を年額で比べる

頼み方は大きく3つです。費用の見え方を比べるため、次の仮の条件を置いて年額に直します。実際の金額を示すものではないので、見積もりを取ったら自社の数字に置き換えてください。

  • 担当者の人件費:仮に1時間あたり2,500円
  • 立ち上げ(ページ作成・出品・FBA設定)を自社で覚えながらやる時間:仮に120時間
  • 立ち上げの単発外注:仮に300,000円
  • 広告運用の継続外注:仮に月50,000円
  • 広告運用を自社でやる時間:立ち上げ期は仮に月20時間、慣れたあとは月8時間
  • 外注と並行した場合の自社の確認・打ち合わせ:仮に月4時間
頼み方1年目の外注費1年目の自社の時間(金額換算)1年目の合計
A. 全部自社0円120時間+20時間×12か月=360時間(900,000円)900,000円
B. 立ち上げだけ外注300,000円確認4時間×3か月+20時間×9か月=192時間(480,000円)780,000円
C. 立ち上げと広告を外注、半年で広告を自社へ300,000円+50,000円×6か月=600,000円確認4時間×6か月+8時間×6か月=72時間(180,000円)780,000円

内訳です。Aは立ち上げ120時間と広告運用20時間×12か月で360時間、2,500円を掛けて900,000円。Bは立ち上げを外注し、その3か月は確認4時間、残り9か月は広告運用を自社で月20時間として192時間、480,000円に外注費300,000円を足して780,000円。Cは立ち上げと広告を半年外注し、その間の確認が月4時間、後半6か月は慣れた状態で月8時間として72時間、180,000円に外注費600,000円を足して780,000円です。

金額の合計だけを見ると、BとCは同じで、Aとの差も大きくありません。 差が出るのは金額の外です。

  • Aは、立ち上げに時間がかかる分、売上が立つまでの期間が延びやすい。楽天側の担当者の時間も削られる
  • Bは、立ち上げは早いが、広告を自社で覚える期間に無駄な広告費が出やすい
  • Cは、外注費は多いが、自社の時間が少なく、半年後に広告の進め方を引き継いだ状態で自社に移れる

この仮の条件では、楽天側の運用を落とさないことを重く見るならC、外注費を抑えたいならB、という選び方になります。自社の人件費や、外注の見積もりの金額を入れ替えると結論が変わるので、表の形だけを使って自社の数字で作り直してください。広告費そのものの目安は広告予算の目安、出品から利益が出るかの見通しは利益シミュレーターで確かめられます。

外注先に確かめたい質問

楽天で売れている店舗がAmazonの外注先を選ぶときは、一般的な選び方に加えて、楽天との両立に関わる点を確かめます。外注先の選び方そのものは外注先の選び方にまとめています。

  1. 楽天の素材を、Amazonの決まりに合わせて作り直す作業は含まれるか。 画像の作り直しが別料金になることが多い部分です
  2. 楽天と在庫を分ける方法を提案してもらえるか。 FBAに預ける分と自社で出す分の分け方、欠品を防ぐ発注の目安まで話せるかを見ます
  3. 立ち上げ後に、どの作業を自社へ移せるか。 移す前提の話ができる外注先は、作業の記録や手順書を残してくれます
  4. 価格や在庫の判断を、誰がどう決めるか。 外注先が勝手に値下げしたり、広告で在庫を使い切ったりしないよう、承認の範囲を決めます
  5. 楽天のセール時期と、Amazonのセール時期が重なったとき、どう調整するか。 在庫の取り合いを事前に話しておくと、セール中の欠品を防げます

FBAと自社出荷のどちらを使うかは在庫の分け方に直結します。FBAと自社出荷の使い分けと、楽天の注文をFBA在庫から出すマルチチャネルの使い方も確かめておくと、外注先との話が早く進みます。

よくある質問

楽天の担当者がAmazonを覚えるまで、どれくらいかかりますか。 出品とFBA納品の手順は、1商品を通しでやれば大枠は分かります。時間がかかるのは広告と検索対策で、数字の見方と判断の基準が身につくまで数か月かかることが多いです。楽天側の運用と並行するなら、その期間は外の手を借りて、担当者には数字を一緒に見てもらう形が進めやすいです。

楽天と同じ価格で出してよいですか。 同じ価格でも構いませんが、手数料や配送の費用の構造が違うので、1個あたりの利益が同じになるとは限りません。販売手数料やFBAの料金はカテゴリー・サイズ・時期で変わるため、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で利益を計算してから決めてください。値付けの考え方は価格の決め方にあります。

立ち上げだけ頼んで、あとは自社でやれますか。 できます。そのときは、立ち上げの外注先に「出品の手順」「FBA納品の手順」「広告の初期設計の理由」を文書で残してもらうことを、契約の段階で決めておいてください。文書がないと、何かを変えたいときに理由が分からず、自社で回し始めてから止まります。

楽天の運用もまとめて頼んだほうが楽ですか。 窓口が一つになる良さはありますが、楽天側がすでに回っているなら、無理にまとめる必要はありません。まとめるか分けるかの判断は楽天とAmazonの運用代行はまとめるか分けるかで詳しく比べています。

まとめ

  • 楽天の経験は、仕入れ・原価・素材・お客様対応にはそのまま生き、ページ・検索・広告・在庫では覚え直しになる
  • 楽天の画像や長い説明、セール前提の価格、在庫の共有をそのまま持ち込むと失敗しやすい
  • 自社か外かは「商品と店の判断が要るか」「Amazon特有の知識が要るか」「毎週回るか一度で終わるか」で分ける
  • 楽天側の担当者に兼務させるなら、立ち上げ期は外に任せる範囲を広めに取る
  • 頼む範囲は時期で変える。立ち上げは広く頼み、育成期から自社へ移す
  • 仮の条件で年額にすると頼み方の差は小さく、差は立ち上げの早さと楽天側への影響に出る
  • 外注先には、素材の作り直し、在庫の分け方、自社へ移す範囲、判断の線引き、セールの重なりを確かめる

当社は2019年からAmazonの支援をしていて、これまでに30ブランド・300商品ほどを見てきました。立ち上げから運用までの作業範囲と料金はAmazon運用代行の内容と料金表に載せています。自社のどこを外に出すかを決めかねている場合は、無料の運用診断で整理するか、お問い合わせからご相談ください。