運用代行の会社を比べるとき、多くの人が最初に見るのが事例のページです。「売上が半年で3倍」「月商が1,000万円を突破」。数字が大きいほど頼もしく見えます。ただ、その数字だけで選ぶと、契約したあとに「思っていたのと違う」となりやすいのも事例の数字です。

理由は単純で、事例の数字には前提が書かれていないことが多いからです。いつからいつまでの比較か、伸びる前の売上はいくらだったか、広告費はどれだけ増えたか、利益は残ったのか。同じ「売上3倍」でも、前提が違えば中身はまったく別物になります。

この記事では、Amazon 運用代行 実績の数字を読むときに確認すべき前提、仮の数字で見る読み違い、面談で聞く質問の例を順に書きます。会社選び全体の進め方は運用代行を比較するときに見るポイント、費用の比べ方は運用代行の料金の型と選び方にまとめているので、あわせて読むと判断が早くなります。

Amazon 運用代行 実績の数字を、そのまま信じてはいけない理由

事例の数字が嘘だと言いたいわけではありません。ほとんどの事例は実際に起きたことです。問題は、その数字が自社に当てはまるかどうかが、数字だけでは分からないことです。

理由1:起点が小さいほど、伸び率は大きく見える

月の売上10万円の商品が30万円になれば3倍です。月の売上1,000万円の商品が1,200万円になれば1.2倍です。代行が加えた価値の大きさは、伸び率だけでは比べられません。起点の売上が書かれていない伸び率は、比較の材料にしにくい数字です。

理由2:比較する期間で、結果が変わる

年末やセールのある月を終点に置けば、どの商品でも売上は大きく見えます。逆に、閑散期を起点に置けば、伸び率は大きくなります。季節の影響を受けやすいカテゴリーほど、どの月とどの月を比べたかが結果を左右します。

理由3:売上は伸びても、利益が残ったかは別

広告費を大きく増やせば、売上はたいてい伸びます。値引きを続けても、売上は伸びます。そのとき利益がどうなったかは、売上の数字には出てきません。

理由4:うまくいった事例だけが載る

事例のページに載るのは、うまくいった案件です。これは自然なことですが、何件の案件のうち何件がその水準まで届いたのかは分かりません。事例の数字は「最も良かったときの姿」として読むのが妥当です。

実績の数字を読むときに聞く7つの前提

事例の数字を見たら、次の7つを確認します。面談でそのまま質問として使えます。

前提聞くことなぜ聞くか
1. 起点の売上伸びる前の月の売上はいくらだったか伸び率の大きさが、起点の小ささから来ていないかを見る
2. 比較の期間どの月とどの月を比べたか季節やセールの影響を外して見る
3. 広告費の増減同じ期間に広告費はいくら増えたか売上の伸びが広告費の積み増しだけで説明できないかを見る
4. 利益の変化粗利や手元に残る金額はどう変わったか売上と利益で結論が逆になっていないかを見る
5. 商品の状態新商品か、販売実績のある商品か。カテゴリーは何か自社の商品と条件が近いかを見る
6. 代行の範囲広告だけか、商品ページや在庫まで含むか何をやって数字が動いたのかを見る
7. 担当者その案件を担当した人が、自社の担当になるか実績が会社のものか、人のものかを見る

7つすべてに答えられる会社は、多くありません。全部そろわなくても問題ないのですが、聞いたときに「答えられない理由」をきちんと説明できるかは見ておく価値があります。守秘義務で数字を出せない場合でも、「起点は月数十万円の規模」「広告費は約1.5倍」のように幅で答えることはできるはずです。

前提7は特に見落としやすい

運用代行の成果は、担当者の判断に大きく左右されます。事例を作った担当者がすでに別の案件に移っていたり、辞めていたりすることは珍しくありません。会社として事例を持っていても、自社を担当する人がその水準の判断をできるかは別の話です。担当者が途中で替わったときの影響は担当者が交代するときの確認点に書いています。

売上と利益で結論が逆になる、仮の試算

前提の3と4がどれだけ効くかを、仮の数字で見てみます。実際の水準を示すものではなく、計算の形を見るための例です。

次の2つの事例があるとします。どちらも代行の開始前と開始6か月後の月の数字です。

  • 事例A:売上は月100万円から月300万円(3倍)。広告費は月10万円から月80万円。値引きで販売価格を平均10%下げた
  • 事例B:売上は月100万円から月150万円(1.5倍)。広告費は月10万円から月15万円。価格はそのまま

粗利率(販売手数料・配送料・原価を引いたあと、広告費を引く前の利益率)は、値引き前で仮に40%とします。値引きをすると、売上に対する粗利率は下がります。販売価格を10%下げると、仮に粗利率は約33%になるとします(原価や手数料の構造で変わるので、自社の数字は利益シミュレーターで計算してください)。

項目事例A(開始前)事例A(6か月後)事例B(開始前)事例B(6か月後)
月の売上100万円300万円100万円150万円
粗利率(仮)40%33%40%40%
粗利40万円99万円40万円60万円
広告費10万円80万円10万円15万円
広告費を引いた利益30万円19万円30万円45万円

この仮の条件では、売上3倍の事例Aは手元に残る金額が月30万円から19万円に減っています。売上1.5倍の事例Bは、月30万円から45万円に増えています。事例のページで目を引くのはAですが、利益で見ればBのほうが成果を出しています。

ここに代行の費用が乗ると、差はさらに開きます。仮に月額固定で月5万円とすると、事例Aは月14万円、事例Bは月40万円です。

もちろん、事例Aのような運び方が間違いとは限りません。新商品で認知を取りにいく時期や、在庫を早く回したい時期には、利益を削って売上を取りにいく判断もあります。大事なのは、その判断を知ったうえで事例を読むことです。広告費をかけて売上を取りにいく時期の考え方は新商品の広告の考え方にまとめています。

事例のタイプ別、読み方の違い

事例のページには、いくつかの型があります。型ごとに確認する点が変わります。

事例の型よくある書き方確認すること
売上の伸び率「売上が半年で◯倍」起点の売上、比較の期間、広告費の増減
到達した売上「月商◯万円を達成」開始前の売上、その月が繁忙期でないか
広告の指標「ACOSを◯%から◯%に改善」広告経由の売上の額が減っていないか
順位「主要な語で1ページ目に」どの語か、検索数はどのくらいか、その順位が続いたか
取引の数「◯社の支援」何をどこまで支援したか、継続している数

広告の指標の改善は、売上の縮小と同時に起きることがある

ACOS(広告経由の売上に対する広告費の比率)は、広告を絞れば下がります。成果の出ていない語を止めるのは正しい判断ですが、売れている語まで絞ってACOSを下げると、広告経由の売上の額は減ります。ACOSの改善を事例として見たら、同じ期間の広告経由の売上の額と、全体の売上に対する広告費の比率(TACOS)も聞いてください。考え方はTACOSの見方で詳しく書いています。

順位の事例は、語の選び方で何とでも言える

検索数の少ない語なら、1ページ目に出すのは難しくありません。順位の事例を見たら、その語が月にどのくらい検索されているか、自社の商品の売上にどれだけつながる語かを確かめます。

面談で実績を確かめる質問の例

面談では、事例の数字よりも「その数字をどう作ったか」を聞くほうが、会社の実力が見えます。次のように聞いてみてください。

  1. 「この事例で、最初の1か月に何をしましたか。」 最初に何を見て、何から直したか。答えが具体的なら、手順を持っている会社です
  2. 「うまくいかなかった案件では、何が原因でしたか。」 失敗の理由を言葉にできる会社は、自社の案件でも早く気づけます
  3. 「この事例の利益は、開始前と比べてどう変わりましたか。」 売上だけでなく利益で話せるかを見ます
  4. 「自社と似た条件の案件はありますか。そのときの数字の幅はどのくらいでしたか。」 カテゴリー、価格帯、商品数、開始前の売上が近い案件の話を聞きます
  5. 「私たちの担当は誰になりますか。その人が担当した案件の話を聞けますか。」 担当者本人の経験を確かめます
  6. 「契約したら、最初の3か月で何をどこまでやりますか。」 実績よりも、これからの段取りが具体的かを見ます

1と2は特に効きます。手順を持っている会社は、うまくいった理由もうまくいかなかった理由も、同じ言葉で説明できます。逆に、数字の大きさばかりを強調して手順が出てこない場合は、契約後の進め方も見えにくいと考えてよいでしょう。よくある失敗の型は運用代行の失敗例にまとめています。

実績の数字が少ない会社を、外していいか

事例の数が少ない、数字を出していない会社もあります。守秘義務の考え方が厳しい、事例の作り方に慎重、など理由はさまざまです。事例が少ないことだけで外すのは早いと考えます。その場合は上の質問の1・2・6に答えてもらい、手順と段取りで判断します。

実績より先に、自社の数字をそろえる

実績を比べる前に、自社の数字をそろえておくと、面談の質が変わります。

  • 主力商品の直近6か月の売上と、月ごとの推移
  • 同じ期間の広告費と、広告経由の売上
  • 主力商品の粗利率(販売手数料・配送料・原価を引いたあと)
  • 在庫が切れた期間と、その間の売上の落ち込み
  • 代行に期待すること(売上を伸ばしたいのか、利益を残したいのか、手間を減らしたいのか)

これがそろっていれば、面談の場で「この事例の前提は、自社と比べてどうか」を確かめられます。代行の会社にとっても、具体的な提案を出しやすくなります。販売手数料や配送料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してください。

代行に何を期待するかを決めておくことも大切です。売上を伸ばしたいなら事例Aのような運び方に近づき、利益を残したいなら事例Bに近づきます。どちらを望むかで、見るべき事例も変わります。代行に頼む目標の決め方は運用代行に頼むときの目標の立て方に書いています。

成果が出るまでの期間も、あわせて聞く

事例の数字が「何か月目の数字か」も確認します。6か月後の数字を見て契約しても、最初の3か月は数字が動かないことはよくあります。その間に何をするのか、何を見れば順調かを聞いておくと、途中で不安になったときの判断材料になります。目安の考え方は運用代行の成果が出るまでの期間にまとめています。

当社が実績をお伝えするときの考え方

当社は2019年から、30ブランド・300商品の運用に関わってきました。ただ、この数字そのものは、自社に合う会社かどうかを決める材料にはなりにくいと考えています。面談では、上の7つの前提に沿って、近い条件の案件で何をしたか、うまくいかなかったときに何が原因だったかをお話しします。数字は幅でしかお伝えできない場合もありますが、その理由も説明します。

よくある質問

事例のページに載っている会社名に聞いて確かめてもいいですか。 事例に協力している会社に直接問い合わせるのは、相手の負担になるので避けたほうがよいでしょう。確かめたいことがあれば、代行の会社に「この事例の前提を教えてほしい」と聞くのが筋です。前提を説明できるかどうかが、そのまま確認になります。

実績の数字を出していない会社は、避けたほうがいいですか。 数字を出していないことだけで避けるのは早いと考えます。守秘義務を重く見ている会社もあります。その場合は、最初の1か月に何をするか、うまくいかなかった案件の原因は何だったか、契約後3か月の段取りはどうか、を聞いて判断します。

事例の伸び率と、自社の見込みの伸び率は同じくらいになりますか。 同じになるとは限りません。起点の売上、カテゴリー、商品の状態、広告費の使い方で結果は大きく変わります。面談では、自社の数字を見せたうえで、どのくらいの幅を見込むか、その前提は何かを聞いてください。前提が語られない見込みの数字は、判断の材料にしにくいものです。

契約したあと、事例ほど伸びなかったらどうすればいいですか。 まず、契約前に決めた目標と期間に照らして、どこが届いていないかを確かめます。月次のレポートで何を変えたか、その理由は何かを見直し、次の3か月で何を変えるかを代行の会社と決めます。それでも改善の筋道が見えない場合は、乗り換えも選択肢です。進め方は運用代行の乗り換えの進め方に書いています。

まとめ

  • 事例の数字は嘘ではなくても、前提が書かれていないことが多い
  • 起点の小ささ、比較の期間、広告費の増減、値引きで、伸び率は大きく見える
  • 起点の売上・期間・広告費・利益・商品の状態・代行の範囲・担当者の7つを確認する
  • 仮の試算では、売上3倍の事例より売上1.5倍の事例のほうが利益は残ることがある
  • 面談では、数字の大きさより「最初の1か月に何をしたか」「うまくいかなかった原因」を聞く
  • 実績を比べる前に、自社の売上・広告費・粗利率・在庫切れの記録をそろえておく
  • 代行に期待することが売上か利益か手間かで、見るべき事例が変わる

当社の運用代行の範囲はAmazon運用代行の内容、料金は料金ページにまとめています。自社の数字を見ながら相談したい場合は、お問い合わせからご連絡ください。