海外で売れているブランドが日本のAmazonで販売を始めるとき、最初に悩むのは「誰が日本で動くか」です。本国のチームは日本語の商品ページを作れず、日本の規制や商習慣も分からない。かといって日本法人を作るほどの規模はまだない。そこで運用代行を探すことになります。

ただ、運用代行に頼めば日本での販売がすべて回るわけではありません。輸入の名義、法規制の確認、返品の受け先など、代行会社が引き受けられない役割があります。ここを決めないまま進めると、商品ページはできたのに納品できない、販売開始後に表示の不備で止まる、といったことが起きます。

この記事では、Amazon Japan 進出で運用代行を使う場合に、国内で用意するもの、販売形態の選び方、代行に任せる範囲と本国に残す判断を順に整理します。日本国内の事業者向けの準備はAmazon出品の準備リストにもまとめていますので、あわせて確認してください。

Amazon Japan 進出の3つの販売形態

日本のAmazonで売る方法は、誰が出品者になるかで大きく3つに分かれます。

販売形態出品者になるのは本国側の手間価格と在庫の決定権向く状況
本国の法人が出品し、運用を代行に任せる本国の法人中。輸入・規制対応の体制は別に用意する本国に残るブランドの見せ方と価格を自社で管理したい
日本の販売代理店(卸先)が出品する日本の代理店小。卸として商品を渡すだけ代理店に移ることが多い日本での手間を最小にしたい。卸価格で利益を確定させたい
日本法人を設立して出品する日本の法人大。法人設立と人員配置が必要日本法人に残る長期的に日本市場を主要な販路にする

運用代行を使うのは、主に1つ目の形です。本国の法人が出品者アカウントを持ち、日本での日々の運用(商品ページ、広告、在庫の提案、問い合わせの一次対応)を代行に任せます。ブランドの表現や価格の決定権を手放さずに済む一方で、輸入者の役割や規制対応は誰が担うかを別に決める必要があります。

2つ目の代理店型は、本国側の手間が最も少ない形です。ただし価格や商品ページの見せ方が代理店の判断になりやすく、ブランドとしての一貫性を保ちにくい面があります。複数の代理店が同じ商品を出品して、価格競争が起きることもあります。

どの形を選ぶかは、「日本でのブランドの見せ方を誰が決めたいか」で判断してください。自分で決めたいなら1つ目か3つ目、手間を減らすことを優先するなら2つ目です。

国内で用意するもの

本国の法人が出品者になる場合、日本で販売を始める前に次のものをそろえます。どれも、運用代行に頼む前に「誰が担当するか」を決めておく項目です。

用意するもの内容担当の決め方
出品者アカウント法人の登記書類、代表者の本人確認書類、入金先の口座など本国の法人が登録する。代行は手順の案内まで
輸入者と通関日本に商品を輸入する名義と、通関の手配輸入の名義を誰が持つかを最初に決める。代行が担えないことが多い
法規制の確認商品の種類によって、電気製品・無線機器・食品・化粧品・医療機器などの規制がある該当するかを専門家や所管の窓口で確認する
日本語の表示商品や外箱への日本語表示、取扱説明書の日本語版規制で必要な表示と、お客様のために入れる表示を分けて確認する
バーコード商品ごとのJANコード、または商品コードの免除申請本国で使っているコードが使えるかを確認する
商標日本での商標の出願・登録ブランド登録に必要。早めに出願しておく
返品と問い合わせの窓口日本国内の返品の受け先、日本語での問い合わせ対応代行が一次対応し、返金・交換の判断は本国に残すことが多い
税務消費税の申告、適格請求書の扱い日本の税理士に確認する

法規制は「該当するか」の確認から始める

日本では、商品の種類によって販売前に満たすべき条件があります。たとえば電気で動く製品、無線で通信する製品、口に入る食品、肌に塗る化粧品などは、それぞれ確認すべき規制が違います。本国で販売できていても、日本の基準を満たしていなければ販売できません。

ここは運用代行の範囲を超えることが多い領域です。代行は「この商品は確認が要りそうです」と指摘はできても、適合しているかの判断は専門家や所管の窓口に確認する必要があります。確認の進め方は販売前に確認する規制・許認可のチェックに整理しています。

商標とブランド登録は早めに出願する

Amazonのブランド登録を使うと、商品ページの充実した説明(A+)やブランド分析のデータが使えるようになり、他の出品者による商品情報の書き換えも防ぎやすくなります。登録には商標が必要で、本国の商標とは別に日本での出願・登録を確認されます。出願から登録まで時間がかかるため、日本進出を決めた段階で手続きを始めておくと、販売開始に間に合いやすくなります。ブランド登録でできることはブランド登録のメリットにまとめています。

商品ページは翻訳ではなく作り直す

海外ブランドの日本展開でよくあるのが、本国の商品ページを翻訳して載せる進め方です。これは多くの場合うまくいきません。

理由は3つあります。

1. 検索される言葉が違う。 本国で使っている商品の呼び方が、日本のお客様が検索する言葉とは限りません。直訳した商品名では検索に拾われにくくなります。日本で実際に検索されている語を調べ、商品名と箇条書きに入れ直す必要があります。

2. 伝えるべきことの順番が違う。 日本のお客様は、サイズ・容量・素材・使い方・お手入れ方法などの細かい情報を購入前に確認する傾向があります。本国のページがブランドの世界観中心でも、日本ではスペックの分かりやすさが購入率を左右することがあります。

3. 単位と表記が違う。 インチやポンドで書かれた寸法、海外のサイズ表記は、そのままでは伝わりません。センチ・グラム表記に直し、日本のサイズ感との比較を添えます。

商品ページの作り直しは、運用代行に任せやすい作業の代表です。ただし、ブランドとして使ってよい表現・使ってはいけない表現は本国側で決め、代行が作った原稿を本国が承認する流れにしておきます。商品名の組み立て方は商品名の書き方を参照してください。

運用代行に任せる範囲と本国に残す判断

日本での運用を代行に任せるとき、作業と判断を分けて考えると整理しやすくなります。

領域代行に任せやすいこと本国に残すこと
商品ページ日本語の商品名・箇条書き・説明文の作成、画像の構成案、検索語の調査ブランド表現の承認、使ってよい写真や主張の範囲
広告キャンペーンの設計、入札と予算の日々の調整、月次の報告月の広告予算の上限、目標とする利益率
在庫販売数の集計、発注量と時期の提案、FBA納品の手配の案内発注の最終判断、生産と輸送の手配
価格競合価格の調査、セール参加の提案定価と値引きの上限の決定
お客様対応日本語での問い合わせの一次回答、レビューの確認と報告返金・交換の判断、品質問題への対応方針
規制・表示確認が必要そうな点の指摘適合の判断と、専門家への確認

ポイントは、お金と約束に関わる判断は本国に残すことです。価格、予算の上限、発注、返金の可否は、日本の市場を見ていない本国には決めにくく感じるかもしれません。それでも代行に任せると、代行側の都合(作業の手間や報酬の増え方)が判断に混ざるおそれがあります。代行には根拠のある提案を出してもらい、本国が決める流れにします。

時差と言語の壁を前提に連絡の形を決める

本国と日本の間には時差があり、使う言語も違います。毎日のやり取りを前提にすると、返事を待つ間に作業が止まります。

あらかじめ、代行が本国の承認なしに進めてよい範囲(例:広告の入札額の調整は決めた幅の中なら事前承認不要)と、承認が必要な範囲(例:価格の変更、新しい広告予算の追加)を表にして合意しておきます。月1回の定例報告と、緊急時の連絡方法も決めておくと、日々の運用が止まりにくくなります。運用代行の基本的な仕組みはAmazon運営代行とはで整理しています。

立ち上げまでの期間と費用の試算

日本での販売開始までの流れを、仮の期間で並べます。商品の種類や規制の有無で大きく変わるので、目安として読んでください。

時期(仮定)主な作業主な担当
1か月目販売形態の決定、出品者アカウントの登録、規制の該当確認、商標の出願本国
2か月目検索語の調査、日本語の商品ページ作成、画像の構成と制作、輸入の手配代行と本国
3か月目FBAへの納品、商品ページの公開、広告の設計と開始代行
4〜6か月目広告の調整、レビューの確認、発注量の見直し代行が提案し本国が判断

費用は、代行への支払いだけでは判断できません。仮に、5商品で日本展開を始める場合を考えます。

  • 代行の初期費用(商品ページ作成と広告設計):50万円と仮定
  • 代行の月額:15万円と仮定
  • 広告費:月20万円と仮定
  • 初回の在庫:1商品あたり200個、仕入れ原価1,500円、輸送・通関費1個あたり300円と仮定

この条件で、販売開始から6か月間に必要な資金は次のとおりです。

費目計算(仮定)金額
代行の初期費用1回500,000円
代行の月額15万円×6か月900,000円
広告費20万円×6か月1,200,000円
初回の在庫5商品×200個×(1,500円+300円)1,800,000円
合計4,400,000円

在庫の補充分、FBAの手数料や保管料、商標や規制確認の専門家費用はここに含めていません。FBAの手数料と保管料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してください。1商品あたりの利益の出方は利益シミュレーターで、売価・原価・手数料率を入れて試算できます。

在庫は輸送の日数を含めて持つ

海外から日本に商品を送る場合、発注してからFBAに届くまでの日数(リードタイム)が国内の仕入れより長くなります。仮に生産に30日、輸送と通関に30日、FBAへの納品と受領に14日かかるとすると、発注から販売できるまで約74日です。この間に在庫が切れれば、広告も止まり、検索順位も落ちます。

リードタイムが長いほど、手元に持つべき在庫は増えます。販売数が見えない立ち上げ期は少なめに入れたくなりますが、補充が間に合わないと立ち上げの勢いを失います。リードタイムの測り方はリードタイムの実測、安全在庫の考え方は安全在庫の計算を参照してください。

失敗しやすい点

海外ブランドの日本進出で、よく見る失敗を挙げます。

本国の価格を為替で換算しただけの売価。 日本の競合の価格帯を見ずに決めると、高すぎて売れないか、安すぎて利益が出ないかのどちらかになります。日本での販売手数料・FBA手数料・広告費を引いた利益を先に計算し、競合の価格帯と照らして決めます。

輸入の名義を決めないまま商品ページを作る。 商品ページが完成しても、商品が日本に届かなければ販売できません。輸入者と通関の手配は、最初の1か月で決めておきます。

問い合わせの返事が遅れる。 日本語の問い合わせに本国が時差を挟んで答えていると、返事が遅れ、お客様の評価やアカウントの指標に響きます。一次回答は代行に任せ、判断が要るものだけ本国に上げる流れにします。

代行に判断まで任せきりにする。 価格や発注の判断まで任せると、本国に日本の数字が残りません。契約を終えたときに、何が売れていて何が売れていなかったかが分からなくなります。月次の報告で、売上・広告費・在庫・利益を本国でも把握できる形にしておきます。契約時の確認項目は運用代行の契約書で確認することにまとめています。

よくある質問

日本に法人がなくても、日本のAmazonで出品できますか。 海外の法人として出品者アカウントを登録する方法があります。ただし輸入者の名義、日本国内の返品の受け先、税務の扱いなど、日本に拠点がないことで別に手配が必要になる項目があります。登録の条件は変わることがあるので、最新の案内を確認したうえで、輸入と税務は日本の専門家に相談してください。

本国の商品ページを翻訳会社に訳してもらえば足りますか。 翻訳だけでは、日本で検索される言葉や、日本のお客様が確認したい情報の順番に合わないことが多いです。翻訳した原稿を土台にしつつ、日本の検索語の調査と、サイズ・素材・使い方などの情報の補強をしてから公開することをおすすめします。

運用代行に、規制の確認まで任せられますか。 確認が必要そうな点を指摘することはできても、適合しているかの判断は専門家や所管の窓口に確認する必要があります。代行に任せるのは指摘と資料の整理までにして、判断の責任は出品者である本国が持つ形にしてください。

販売開始後、どのくらいで黒字になりますか。 商品の利益率、広告費、競合の状況で大きく変わるため、一律には言えません。立ち上げ期は広告費が先に出ていくので、最初の数か月は赤字になることを前提に資金を用意し、月ごとに1商品あたりの利益と広告費の比率を見て判断してください。

まとめ

  • 日本での販売形態は、本国の法人が出品する形・日本の代理店が出品する形・日本法人を作る形の3つ。ブランドの見せ方を誰が決めたいかで選ぶ
  • 出品者アカウント・輸入者と通関・法規制・日本語表示・バーコード・商標・返品窓口・税務は、代行に頼む前に担当を決める
  • 法規制は「該当するか」の確認から始め、判断は専門家や所管の窓口に確認する
  • 商品ページは翻訳ではなく、日本の検索語とお客様が確認したい情報で作り直す
  • 作業は代行に任せ、価格・予算の上限・発注・返金の判断は本国に残す
  • 立ち上げ資金は、代行費用だけでなく広告費と在庫、輸送の日数を含めて見積もる
  • 時差を前提に、事前承認なしで進めてよい範囲と承認が必要な範囲を表で決めておく

当社は2019年からAmazonの支援をしていて、これまで30ブランド・300商品ほどに関わってきました。日本での運用で引き受ける作業の範囲はAmazon運用代行のサービス内容に、料金は料金プランに公開しています。日本進出の準備をどこから始めるか整理したい場合はお問い合わせからご相談ください。