Amazonの運用を誰かに引き継ぐとき、いちばん困るのは「なぜこの設定になっているのか」が分からないことです。広告の入札額、除外キーワード、価格、商品名の言い回し。どれも理由があって今の形になっていますが、その理由は前の担当者の頭の中にしかないことがほとんどです。
Amazon運用 引き継ぎで困らないためには、数字そのものより、変えた理由と結果を記録に残すことが要ります。数字はセラーセントラルや広告の管理画面からあとで出せますが、理由はあとから出せません。
この記事では、担当者の交代、社内から外注への切り替え、外注から内製への戻しのどれにも使える記録の残し方を書きます。
Amazon運用 引き継ぎで失われるのは「理由」
引き継ぎのあとによく起きることを並べると、残すべき記録が見えてきます。
- 除外していた語を「売れそうなのに出ていない」と思って外し、無駄な広告費が戻る
- 前の担当者が意図的に下げていた入札を、順位を上げようとして戻してしまう
- 以前に試して効果がなかった商品名の変更を、もう一度試してしまう
- 規制や審査で一度止められた表現を、知らずに使ってしまう
どれも、前に誰かが判断した結果を、理由を知らないまま元に戻している点が共通しています。管理画面には今の設定は残りますが、「なぜそうしたか」「試してどうだったか」は残りません。
引き継ぎの記録は、この「理由」と「試した結果」を残すためのものです。
残すべき記録は5種類
記録を全部残そうとすると続きません。次の5種類に絞ります。
| 記録 | 中身 | 更新のタイミング |
|---|---|---|
| 変更ログ | 何を・いつ・なぜ変えたか、いつ結果を見るか | 変更したその日 |
| 商品ごとの基本情報 | 原価、目標の利益率、仕入先、リードタイム | 条件が変わったとき |
| 広告の方針 | 商品ごとの目標の数値、除外の方針、主力の語 | 月に一度 |
| 試して効果がなかったこと | 試した内容、期間、結果、やめた理由 | やめたとき |
| 注意事項 | 規制・審査で止められた表現、過去のトラブル | 起きたとき |
このうち、いちばん効くのが変更ログと試して効果がなかったことです。この2つがあれば、後任者は同じ失敗を繰り返さずに済みます。
商品ごとの基本情報は、原価と目標の利益率が書いてあれば、後任者が広告の目標値や値下げの限度を自分で計算できます。原価の内訳の分け方は原価の内訳の出し方、利益率の目安は利益率の目安と決め方に書いています。
変更ログは1行で書く
変更ログは、続かなければ意味がありません。1回の変更を1行で書ける形にします。
| 日付 | 商品 | 変えたこと | 理由 | 結果を見る日 | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10/1 | 商品A | 「おおまか一致」の入札を60円→40円 | 広告費が膨らみ、売上につながっていない | 10/15 | (あとで書く) |
| 10/3 | 商品B | 商品名の先頭を用途の語に変更 | 検索用語レポートで用途の語の注文が多い | 10/24 | (あとで書く) |
| 10/5 | 商品A | 中古・部品の語を除外 | クリックのみで注文0が続いた | 10/19 | (あとで書く) |
ポイントは結果を見る日を、変更したその日に書いておくことです。この欄があると、変えっぱなしにならず、効果があったかどうかが記録に残ります。結果の欄には、数字を1つだけ書けば十分です(例:「広告費 −30%、注文数は変わらず」)。
よくある失敗は、複数の変更を同じ日にまとめて行い、ログにも1行で書いてしまうことです。入札と商品名を同時に変えると、どちらが効いたのか分からなくなります。変更はできるだけ1つずつ、間隔をあけて行い、1行ずつ記録してください。
置き場所は、関係者が全員開けるスプレッドシート1つにします。チャットやメールに散らばった記録は、引き継ぎのときに拾いきれません。
「試して効果がなかったこと」を残す
成功した施策は、今の設定にそのまま残っています。残らないのは、試してやめたことです。
これを書いておかないと、後任者は「まだ試していない打ち手」だと思って、同じことをもう一度やります。広告のキャンペーン、クーポン、価格の変更、画像の差し替えなど、試した期間と費用がかかったものほど残しておく価値があります。
書く内容は次の4つです。
- 何を試したか(例:商品Aのクーポン10%)
- いつからいつまで(例:8/1〜8/31)
- 結果(例:注文数+5%、利益は−12%)
- やめた理由と、条件が変わったら再検討するか(例:利益が残らない。原価が下がれば再検討)
4番目が大事です。「効果がなかった」で終わらせず、どういう条件なら再検討するかまで書いておくと、後任者は状況が変わったときに判断できます。
引き継ぐときに渡す一式
担当者の交代や外注の切り替えのときは、次の一式を渡します。
| 渡すもの | 中身 |
|---|---|
| 記録のスプレッドシート | 上の5種類の記録 |
| 権限の一覧 | 誰にどの権限を付与しているか、外すべき権限 |
| 月次の数字 | 直近6か月の売上・広告費・利益の推移 |
| 進行中の施策 | 今試していることと、結果を見る日 |
| 定例の作業 | 毎日・毎週・毎月の作業の一覧 |
権限の一覧は、外注先との契約を終えるときに特に重要です。外注先に付与した権限が残ったままになっていないかを確認し、終了日に外します。外注の解約と引き継ぎの流れは運用代行の解約と引き継ぎにまとめています。
渡したあとは、2週間ほど並走するのが目安です。後任者が実際に作業をして、分からないことを前任者に聞ける期間をつくります。記録に書いていなかった判断は、この期間に出てきます。出てきたものは、その場で記録に足します。
記録を続けるための運用ルール
記録の仕組みは、作るより続けるほうが難しいものです。次の3つを決めておくと続きやすくなります。
1. 変更した人が、その日に書く。 あとでまとめて書こうとすると、理由を忘れます。書く時間は1行1分程度です。
2. 月に一度、結果の欄を埋める。 月次の点検のときに、結果を見る日を過ぎた行の結果を書きます。月次でやる作業の流れは月次の運用ルーティンにまとめています。
3. 記録がない変更はしない。 外注先にも同じルールで書いてもらいます。契約の段階で「変更ログを共有すること」を条件に入れておくと、あとから頼むより揉めません。契約で確認しておくことは運用代行の契約で確認することに書いています。
よくある失敗は、記録の形式を細かく作り込みすぎることです。項目が多いと書かなくなります。最初は変更ログだけで始め、3か月続いたら他の記録を足していく順番が現実的です。
よくある質問
記録はどのツールで残せばいいですか。 関係者全員が開けて、行を足しやすいスプレッドシートで十分です。専用のツールを入れるより、まず1か所に集まっていることが大事です。チャットやメールでやりとりした判断も、決まった時点でスプレッドシートに1行書き写してください。
外注先が変更ログを書いてくれません。どうすればいいですか。 月次の報告に「今月変えたことと理由」の欄を入れてもらうのが入りやすい形です。報告の中に変更の一覧があれば、それを自社のスプレッドシートに転記できます。新しく契約するときは、変更ログの共有を契約の条件に入れておきます。
前任者がすでにいなくなっていて、記録がありません。どこから手を付ければいいですか。 まず今の設定を写しておきます。広告のキャンペーンと入札額、除外キーワード、価格、商品名を、その日の状態として記録します。そのうえで、変更するときから変更ログを付け始めます。理由が分からない設定は、すぐに戻さず、1つずつ変えて結果を見る形で確かめていきます。
記録にどのくらい時間がかかりますか。 変更ログは1行1分程度です。月に一度の結果の記入と、試してやめたことの記録を合わせても、月に1時間前後に収まるのが目安です。その1時間で、引き継ぎのときに同じ失敗を繰り返す費用を減らせます。
まとめ
- Amazon運用 引き継ぎで失われるのは、数字ではなく変えた理由と試した結果
- 記録は5種類に絞る:変更ログ/商品ごとの基本情報/広告の方針/試して効果がなかったこと/注意事項
- 変更ログは1行で、結果を見る日をその日に書く
- 試してやめたことは、再検討する条件まで残す
- 引き継ぐときは一式を渡し、2週間並走する
- 続けるために、変更した人がその日に書く・月に一度結果を埋める・記録のない変更はしない
記録が整っていると、担当が変わっても運用の質が落ちにくくなります。外注に任せるか社内で持つかを迷っている場合は、内製と外注の分け方も参考になります。記録の整理から運用の立て直しまでまとめて相談したい場合は、Amazon運用代行の内容をご覧ください。
